日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P2-162
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ヒトiPS細胞由来ニューロンのMEAデータを用いた殺虫剤の神経毒性評価
*石橋 勇人永福 菜美鈴木 郁郎
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抄録

神経毒性における化学物質の in vivo 評価には、かなりの時間と費用が必要であること、げっ歯類からヒトへの外挿が必要であること、毒性メカニズムに関する情報が限られていることから、一定の制限がある。この問題に対処し、化学物質における神経毒性を評価するためには、New Approach Methodologies を使用した in vitro 試験法の開発が重要である。平面微小電極アレイ (MEA)は、電極上に神経細胞を培養することで神経の電気的な活動を計測することができ、化学物質暴露による神経ネットワークの活動変化を評価できる。ただし、化学物質の評価基準に関する議論は未だ不十分である。この研究では、ヒト iPS細胞由来ニューロンのMEAデータを使用して、神経活動に対する殺虫剤の影響を評価した。MEA計測で得られた電気生理学的パラメータについて主成分分析を行い、化学物質暴露による過剰な神経活動への影響を、溶媒添加時の神経活動の標準偏差を用いて定義した。MEA計測における神経毒性の陽性対照として既知の痙攣誘発化合物を使用し、ヒトでの神経毒性の検証が不十分な殺虫剤を評価することにより、これらの殺虫剤がヒトで神経毒性を示すことが示唆された。さらにMEA計測における、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、GABAA受容体阻害剤、Naチャネルopenerとして作用する殺虫剤の特徴的な応答を明らかにすることで、殺虫剤の作用機序推定を検討した。結論として、ヒトiPS細胞由来ニューロンのMEAデータを使用した神経毒性評価法が、動物実験の代替となる in vitro 神経毒性試験法の 1 つとして期待される。

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