主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
毒性を呈する化学物質が惹起する遺伝子発現プロファイル(マイクロアレイデータ)に対して、細胞一個あたりのmRNAコピー数を推定するプロセスを加えることにより定量的な比較を実現可能としたPercellomeデータベース[1]は、化学物質の暴露によって引き起こされる毒性の分子メカニズムを推論する上で有用なリソースである。本データベースには、マウスへの曝露用量、曝露時間ごとに遺伝子発現量(上記プロセスにより推定される細胞一個あたりのmRNAコピー数)が格納されており、遺伝子発現量の動的変化を定量的に捉えることにより「どのような分子ネットワークの変動が化学物質曝露による毒性発現と紐付けられるか」を抽出することができる。本データベースを用いて、既知のPPAR alpha(Peroxisome Proliferator Activated Receptor Alpha)リガンドおよびこれまでの研究成果からPPAR alphaリガンドであることが示唆されている化学物質3種(クロフィブラート、バルプロ酸、エストラゴール)にDEHP(フタル酸ジ(2―エチルヘキシル))及びPB(フェノバルビタール)を加えて遺伝子発現量の動的変動パターンを比較し、これら5種に共通するパターンや固有に認められるパターンを検出した。本講演では、化学物質曝露が引き起こす多種多様な生体反応について報告するほか、有用な解析ツールを紹介する。
[1] Kanno J. et al., J. Toxicol. Sci. 2013;38(4): 643-654