主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
動物の腸内には腸内細菌が棲息しており、例えばヒトの場合、その数は1000種類以上500兆から1000兆匹にもなるといわれている。ゲノム数で考えると、我々ヒトは1ゲノムだが、我々の腸内に棲み着いている腸内細菌のゲノムは1000ゲノム以上ということになる。細菌1ゲノムあたりの遺伝子数は、宿主のそれに比べればはるかに少ないものの、腸内細菌全体では宿主の遺伝子数をはるかに凌駕する。腸内細菌の大きな役割として、食べ物の消化や免疫賦活による宿主の健康維持が挙げられる。こうした動物の生存を保証する腸内細菌は動物種ごとに異なっており、その動物固有の「共生腸内細菌」として長い年月をかけ宿主と腸内細菌は共進化してきたと考えられる。ある動物種を特徴づける「共生腸内細菌」の解明には、野生動物の腸内細菌研究が不可欠である。なぜなら動物の腸内細菌は、飼育下ではなく野生環境下でそれぞれの動物に適応・進化してきたからであり、人に飼育されることにより、その動物本来の腸内細菌を失ってしまうからである。特に植物食の野生動物が摂食する野生の食物は、人間用の果実や野菜とは決定的に異なっている。野生の植物は、可食部が少なく繊維質が多く、可溶性の糖質が少なく、多種多様な植物二次代謝産物を含んでいる。また植物の細胞壁を構成する構造性多糖であるセルロースやヘミセルロース、果実に含まれる多糖である植物ガムを構成するアラビノガラクタンなどを消化分解するための酵素を動物自身は作ることが出来ない。そのため植物食者は、これらの難消化性の糖質の発酵分解を、消化管に共生する原生動物や細菌に依存している。 本発表では野生霊長類や野生鳥類の腸内細菌について、植物二次代謝産物や難消化性糖質の分解能に着目し、その特徴を議論する。