主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
近年、予防医学においてゼロ次予防という概念が提唱されている。WHOのテキストでは、ゼロ次予防について「疾病リスクを高めることが知られている社会的、経済的、文化的要因の発生とその定着を防ぐこと」と記載されています。我々は環境中の化学物質が人体に与える影響に着目して研究をおこなっており、ヒトが胎児期から様々な環境化学物質に曝露されていることを明らかにしてきた。我々の検討ではPCBなど複数の残留性有機汚染物質(POPs)が胎児組織である臍帯からも検出されている。胎児期は様々な環境因子の影響に対して脆弱であることから健康影響が懸念される。胎児期環境の影響については環境省「エコチル調査」及び千葉大学「こども調査(C-MACH)」の2つの出生コホートを用いた研究を進めている。これに加えて、我々は環境化学物質への曝露を減らす方策についても検討を行ってきた。体内に蓄積されたPOPsを削減する試みや室内空気環境からの化学物質曝露を減らすプロジェクト(ケミレスタウンプロジェクト)などを進めてきた。現在、人々が意識せずとも「暮らしているだけで健康になる」ゼロ次予防の重要性を認識し、社会実装に向けた取り組みであるWACoプロジェクト(JST OPERA)においてを産学連携による研究を進めている。本シンポジウムではWACoプロジェクトを含め、今まで我々がおこなってきた研究について紹介したい。