主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
【目的】脂腺増殖症は、主に顔面に分布する成熟した皮脂腺が増殖・隆起した症状と皮脂腺の肥大化を特徴とし、遺伝的要因や紫外線曝露等に起因すると考えられている。また、臓器移植後の治療において免疫抑制剤cyclosporine (CsA)による脂腺増殖症の発症が知られているが、その薬物の副作用機構は不明である。本研究では、脂腺増殖症の発症機構の解明を目的に、ヒト皮脂腺代替モデルのハムスター脂腺細胞(HamSEB)において皮脂腺機能に対するCsAの作用を検討した。【方法】HamSEBにおける皮脂産生はNile Red染色法、細胞内脂肪滴形成はOil Red O染色法により解析した。皮脂産生調節酵素のSCD-1とDGAT-1および脂肪滴形成因子のPLIN-1、細胞増殖関連因子のEGFR、Lamin B1、PCNAとp53の遺伝子発現はリアルタイムRT-PCR法により解析した。また、細胞増殖活性はcck-8 assayにより解析した。【結果】HamSEBにおいて、CsAは濃度依存的に脂肪滴形成および皮脂産生を促進した。また、SCD-1、DGAT-1およびPLIN-1の遺伝子発現はCsAにより促進された。一方、HamSEBにおいてEGFRおよびLamin B1の遺伝子発現はCsAの濃度依存的に促進された。また、PCNAおよびp53の遺伝子発現もCsAにより促進された。さらに、CsAはHamSEBの細胞増殖活性を促進した。【考察】CsAはSCD-1、DGAT-1および PLIN-1の遺伝子発現を促進することで皮脂産生を増加させることが示唆された。また、CsAによるEGFR、Lamin B1、PCNAおよびp53の発現増加が細胞増殖促進に関与することが示唆された。したがって、CsAは皮脂の産生促進のみならず、脂腺細胞の増殖をも増強することで皮脂腺を肥大化させるものと推察される。