2018 年 36 巻 1 号 p. 5-
【背景】
富山県では平成27年8 月よりキーワード方式によるドクターヘリ(以下ドクヘリ)の運用が開始され、キーワードによる要請基準はいわゆる「重症感」がある状態に広く対応している。一方で救急隊接触後のキャンセル基準については一定のルールが無く、各隊の判断に委ねられている。
多くの救命士が「限られた医療資源をより緊急度の高い傷病者のために投入する」ことの必要性を認識しているが、適切なキャンセルが行われているとは言えない。
【目的】
救急隊接触後にドクヘリキャンセルする場合の指標を検討する。
【対象と方法】
救急隊が観察した際のバイタルサインを「傷病者の搬送及び受入れの実施に関する基準」(平成27年10月 富山県)の「<緊急性>重篤(バイタルサイン)」の数値(以下基準値)と比較し、重症傷病者の的中率を調査する。
【結果】
CPA・転院搬送を除く389件のうち基準値に該当したものは202件(ロードアンドゴーによる判断含む)そのうち重症傷病者は110件だった。陰性的中率は78.1%、特異度は
61.3%だった。
重症傷病者のうち基準値に該当しなかった事案「偽陰性」41件の内訳は頭蓋内病変26件、心血管疾患5 件、その他10件だった。
【考察】
傷病者と対面して問診し、器具を使用して客観的に観察した結果、バイタルサインが基準値に該当しなければ、ドクヘリキャンセルを考慮した活動が必要であり、基準値がひとつの「ものさし」として活動の一助になる。
偽陰性となる場合において、頭蓋内病変の初期治療では画像診断などによる治療適応判定が重要であり、また、心疾患でも適切な医療機関への搬送が重要である。