破壊じん性試験は, ばね鋼の特に硬い領域におけるじん性を評価するうえで有効な手段となりつつある. 最近の自動車用懸架ばねに用いられるコイルばねでは, へたりを抑えるために硬くなる傾向にあるが, そのように硬くなった領域においては従来の衝撃試験では精度が低くなり, 適用が困難であった.
本研究は, JISで規定されたばね鋼と, さらに代表的ばね鋼であるSUP 6とSUP 7にCrをはじめとする典型的添加元素を加えた実験ばね鋼について, 破壊じん性試験によるじん性評価を試みたものである. その結果, JIS規格ばね鋼では, Cr-V鋼であるSUP 10が最高の破壊じん性値を示したのに対し, SUP 9AとSUP 11Aは最低の値を示した. また最も多くSiを含むSUP 7にCrを添加した場合には, 破壊じん性値を急激に低下させることが明らかになった. さらにSiの影響としては, Si-Mn鋼におけるSi量を1.60-2.50%の間で変化させても破壊じん性値はほとんど変化しないことがわかった.