本報告は, 焼入れ, 及び焼もどし側ともに高周波誘導加熱装置を装備した新しいタイプのオイルテンパー炉で製造した高強度オイルテンパー線の性能について述べたものである。 高強度にするための方法としては, オイルテンパー処理の焼もどし温度を低めることにより行なった.
結果を要約すると以下のとおりである。
(1) 本法により製造した195kgf/mm2級の高強度炭素鋼オイルテンパー線は, 急速加熱の効果によりオーステナイト結晶粒度が微細であり, 良い機械的性質を示す.
(2) 高強度化に伴う利点としては, 疲労強度の増大と室温におけるばねの耐へたり性の向上が認められるが, 耐熱性は期待できない。
(3) 高強度炭素鋼オイルテンパー線は, 低温焼鈍に対する温度感受性が高いので, 使用に当っては, コイリング後の低温焼鈍において温度管理が重要となる.