1987 年 1987 巻 32 号 p. 75-101
めっきはばねにおいてごく標準的な表面処理として多用されているにもかかわらず, ばねにとって決定的な問題であるめっきぜい化については不明僚なところが多い. 本委員会では, 電気亜鉛めっきを対象として各めっき処理工程とぜい化の定量的関係の把握, ぜい化防止を目的としためっきシステムの決定, そしてベーキング条件のぜい化防止効果及び実物ばねによるぜい化評価について共同研究を行った.
結果を次に示す.
(a) めっき前処理工程では酸洗が激しいぜい化を生じさせる. この防止には抑制剤が極めて有効である.
(b) 電解脱脂は, 陽極・陰極共にほとんどぜい化を生じさせない.
(c) ぜい化へのめっき浴種の影響は, 塩化・ジンケート・シアン浴の順に小さい.
(d) ぜい化の少ないめっきシステムは次のようになる. 抑制剤添加の酸洗→陽極又は陰極電解脱脂→塩化亜鉛浴
(e) 伸線加工を施された線ばねは, ぜい化が生じにくい.
(f) 熱処理の影響では, 油焼入焼戻の方がオーステンパー処理よりぜい化が大きい.
(g) 熱処理品は, ベーキングをできるだけ十分に行うことが望ましい.
(h) 薄板ばねの熱処理硬さの影響は, HRC52に対してHRC46, 42と硬さが低下するとぜい化はかなり低下する.