樹木医学研究
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論文
イタヤカエデの樹液溢出と気温との関係
米田 亜沙美岩永 史子芳賀 弘和Chiu Chen-Wei沖田 総一郎山中 典和山本 福壽
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2020 年 24 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

落葉広葉樹では,早春に糖を多く含む木部樹液が上昇する現象がみられる.著者らは中国山地に自生するイタヤカエデを対象に,樹液溢出量と気温との関係性に重点を置いて調査を行った.2016年と2017年に2月上旬から溢出する樹液を採取して重量を測るとともに,積雪,気温,樹液の糖度と糖組成を調査した.樹液の溢出は日最低気温が-10.4~-2.6℃で,日最高気温が2.9~16.8℃まで上昇するときに発生する傾向がみられた.樹液溢出量は胸高直径が大きい個体ほど多い傾向がみられた.2月の中旬から3月中旬にかけて多くの樹液溢出が認められた.3月下旬の樹液溢出量の低下とともに,樹液の糖度も徐々に低下し,総可溶性糖濃度も徐々に減少した.スクロース濃度は3月下旬に減少したが,逆にグルコース濃度とフルクトース濃度は急激に増加した.調査対象年中では樹液溢出の発生しやすい気温条件や樹液の糖組成に明らかな差異は認められず,イタヤカエデの樹液溢出は気温変化に同調することが示唆された.

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© 2020 樹木医学会
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