Tropics
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原著論文
タイ国南東部に生息するキノコを栽培するシロアリMacrotermes carbonarius (Hagen) の幹蟻道を使った採餌活動
杉尾 幸司
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1995 年 4 巻 2+3 号 p. 211-222

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抄録
Macrotermes carbonarius は,キノコを栽培するシロアリのなかで唯一地上歩行をして採餌を行う種である。本種の探餌活動を明らかにするため,採餌活動の時間的・空間的変化についてタイ国南東部で調査した。その結果,採餌に際して以下のような活動を行うことが確認できた。
採餌のために地表に空けた穴からMajor worker が次々と地表に現れ,土と肛門より出した物質で地表を舗装して道をつくった。この舗装された道は,地表の穴から採餌場をむすぶ幹蟻道として利用され,採餌のために地上歩行をする行列はこの道の上を通って採餌場に向かった。行列の中心には採餌活動を行う2-4 列のMajor worker が位置し,先頭と両側はSoldier によって守られていた。Major workerは舗装された道の終点に達すると採餌場の各所に分散して餌を捜し,地面に落ちている枯草などを咥えて再び舗装道上の行列に合流して餌を巣に運びこんだ。また,採餌場の外周もSoldierによってガードされており,採餌の範囲を広げる際にも常にSoldierが先頭であった。
採餌を行うのは夜間だけで,これらの活動は乾期にのみ確認できた。一晩のうちに同時に数カ所の採餌場所で活動を行うことはなく,各々の採餌は1 ヵ所の探餌場を利用して行われた。また,採餌場所を頻繁に変えるため同じ幹蟻道や採餌場所を2 日以上連続して使用することはまれであった。
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© 1995 日本熱帯生態学会
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