1995 年 4 巻 2+3 号 p. 239-245
Ocotea 属は中米コスタリカの低地熱帯雨林の林床に分布する低木である。同属の一部の種においては枝の髄部分を利用したアリMyrmelachista 属の共生現象が認められている。本研究では,Ocotea属のアリ共生種と非共生種の聞の形態的差異を樹形の特徴から明らかにした。アリ共生種と非共生種の聞には枝の基部直径における差異は認められず,アリに提供され得る住み場所資源としては両者の聞で差がないことが確認された。一方で,共生アリを持つ種は非共生種よりも葉面積の大きな葉を持ち,枝の基部直径に対する枝長は非共生種のうちの2 種よりも短かった。共生種のうち2 種は非共生種よりも枝の平均節間長が短かく,その結果,隣合う葉の自己庇陰をさけるため,葉は非共生種に比べて細長い形をしていた。このような結果から, Ocotea 属のアリ共生種においては,同化部分への資源配分率が非共生種よりも高くなっており,それが樹形に及ぼす影響も明らかになった。Ocotea 属のアリ共生種と非共生種との樹形の差異は,アリ共生種と共生アリの共進化の可能性を示唆している。