芝草研究
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短報
蛍光顕微鏡による芝草葉部自家蛍光の観察
宇城 正和
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2010 年 38 巻 2 号 p. 156-161

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抄録

芝草に極少水量 (30~40 ml/m2) の葉面施肥を行う際, 栄養素は気孔あるいは孔辺細胞気孔側面上部クチクラ層等より吸収されるため, 気孔の分布や状態を知ることは重要な課題である。また, 葉表面の状態を観察して, 芝草活力の指標となる構造的特徴を探ることも意義深いものがある。芝草クリーピングベントグラス (Agrostis stolonifera) 7品種とヒメコウライ (Zoysia matrella) の葉部表面を蛍光顕微鏡を用いて観察した。UV照射により孔辺細胞および葉脈は自家蛍光を発したが, 微弱な場合でも増感によって画像処理すると明瞭にこれらが認められた。気孔が葉の表裏に多数見られ, 葉面吸収が効率的に行われる要因と推測された。葉表面の観察では, 細胞壁が青く自家蛍光を発し, 表皮細胞がやや凸状に隆起していること, また, 葉表面の各所には棘状小突起が観察された。さらに, 芝草刈り取り後, 5日目の残存葉身切断面には, 強い自家蛍光が観察された。これら葉表皮からの自家蛍光による観察は, 芝草活力の判定を行う際, その指標となる可能性が考えられた。UV照射による自家蛍光の観察法は, 前処理の必要がなく, 小さな細葉を持つ芝草葉部の観察には非常に有効な方法であると考えられた。

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© 2010 日本芝草学会
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