芝草研究
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短報
米国と比較した日本のゴルフ場グリーンにおける土壌分析値の現状
宇城 正和宇野澤 孝次遠藤 慎佐藤 正樹Cartwright Tim
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 40 巻 1 号 p. 30-36

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抄録

日米のゴルフ場におけるグリーン土壌が同一の分析法によって測定され, それぞれの各要素平均値が比較された (日本サンプル総数: n=869, 2008〜2010年, 米国サンプル総数: n=6,493, 2006年) 。日本の置換性多量要素のPO4-Pの平均値113.8ppmは米国のそれより1.7倍高い値を示したが, その他のK, Ca, MgおよびSは米国のそれぞれ1.12, 0.54, 0.66および0.35倍にとどまった。さらに, 日本の可給態多量要素および微量要素 (P, K, Ca, Mg, S, FeおよびMn) は, 米国平均値の0.33〜0.67倍と低い値を示した。日本の置換性多量要素5種をSLAN (sufficiency level of available nutrients, 利用可能栄養素充足水準) による中程度充足範囲 (以下, SLAN範囲と略称) と比較したところ, Pは全データの約95%がSLAN範囲より過多であり, 他の多量要素K, Ca, MgおよびSでは各々全データの50〜80%はSLAN範囲より低かった。以上の結果から, 日本のゴルフ場グリーンでは, Pのみ過剰施肥の傾向にあるが, K, Ca, MgおよびSの施肥量については不足していること, また, 可給態要素は特に, 欠乏しやすいことが推察された。また, 多量および微量要素の同一要素における置換性–可給態要素の相関係数を算出すると, 最大値を示したCaでもr=+0.641であり, 多くは無相関 (0≦r<0.2, K, P, MnおよびFe) を含め中程度以下 (0.2≦r<0.6, Cu, S, MgおよびNa) の相関にあった。これらの結果は, 置換性要素量の多少が芝根にとって即吸収可能な可給態要素量の多少を表すものではないことを示唆している。

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© 2011 日本芝草学会
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