芝草研究
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コウライ芝の生育相と昭和55年冷夏の影響
角田 三郎
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1981 年 10 巻 2 号 p. 111-120

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抄録

(1) 昭和54年と55年の2年間, 程ケ谷カントリークラブ・コウライグリーン4面を使用して肥料試験を実施した。54年は年間NPK各25kg, 35kg, 45kg区を設け, 55年は年間NPK各20kg, 30kg, 40kg区を設けた。55年は冷夏に見舞われたため54年と55年の刈り込み乾重, NPK含有率, デンプン含有率, 粗脂肪含有率等の比較から, 冷夏のコウライ芝生育相におよぼす影響を調べた。
(2) 水稲では, 一般に生育相を栄養生長期, 生殖生長期, 登熟期に分けて考え, 全乾物重もその増加速度が“S”字曲線を描くが, ゴルフ場コウライ芝の場合は刈り込みが年間100~150回におよぶので, 水稲のように各生育相を明瞭に区別することができなかった。グリーンコウライ芝では刈り高が4~6mmのため, 生殖生長を営むことが少なく, また刈り込み乾重も“S”字曲線を描けず逆“V”字形になった。
(3) 昭和55年は年間を通じて54年より低温で, 年間の刈り込み乾重をみると55年40kg区は54年35kg区の13.5%減収であった。特に55年8月は54年8月平均温度より4.43度低いが, 刈り込み乾重はそれほど冷夏の影響を受けず, わずか12.0%減収であった。むしろ9月から11月の低温が生育に大きく影響し, 9月54.0%10月63.7%, 11月100%, 9月~11月合計で59.4%の減収であった。
(4) 一般的に, 禾本科作物の長期雨天, 冷夏のときの施肥は子実収量低下をまねくため施肥を控えるが, ゴルフ場の芝草では, 長雨, 冷夏でも施肥量の多い40kg区の刈り込み乾重が, 他の2区よりも多かった。
(5) コウライ芝は10月 (平均温度17.51℃) 11月 (平均温度11.56℃) の低温期でも, 晴天に恵まれてから同化作用が旺んになり, デンプンの蓄積が10月24.00%, 11月36.06%になった。生長が停止してから蓄積養分合成が旺んになり, 低温の影響を余り受けなかった。
(6) 一般禾本科作物の粗脂肪は1.2%程度であるが, ゴルフ場グリーンのコウライ芝では3~4倍高い粗脂肪が認められた。

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