芝草研究
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芝草を加害するコガネムシ類に関する研究XIV
コガネムシ類の産卵に及ぼす摂食と交尾の影響
原田 純次吉田 正義廿日出 正美
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1981 年 10 巻 2 号 p. 145-154

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抄録

芝草地のみで増殖するコガネムシ (オオサカスジコガネ・チビサクラコガネ) と幼虫と成虫の摂食する餌植物が異なるコガネムシ (ドウガネブイブイ) において, 摂食および交尾の有無がその卵巣の発育や産卵におよぼす影響について明らかにするため, 羽化直後の成虫を芝草を与えた場合 (ドウガネブイブイの場合はカキの葉を給与する) と木材粉のみで飼育した場合や個別で飼育した場合と一対で飼育した場合などにおける, 羽化後の各日日の体重を測定してその減少曲線を検討するとともに, 卵巣の重量, 蔵卵数, 産卵数, 乾物重量などを測定し, 検討した。
(1) オオサカスジコガネの雄を芝草を与えた場合と与えなかった場合, または個別飼育と一対で飼育した場合における体重の減少曲線は, いずれも同様な傾向がみられ図1に示すようであった。雌を一対で飼育した場合は芝草の有無にかかわらず雄の場合の体重減少曲線に類似した傾向がみられた。雌を個別で飼育した場合は芝草の有無にかかわらず羽化後9日目ころから緩やかになった。これは成虫を個別飼育したことにより交尾, 産卵が行われなかったためと考えられる。
(2) チビサクラコガネの雌雄の体重減少曲線は, いずれの場合もオオサカスジコガネのそれとほぼ同様であった。
(3) ドウガネブイブイを餌を与えずに飼育すると, いずれの場合も羽化後10~15日目で死亡した。その場合の雌雄の体重減少曲線はほぼ同様であった。餌を与えて飼育した場合は雌雄とも羽化後7~10日目までは摂食をせず, 羽化日の体重の65~75%まで減少した。その後摂食を始めてからはほぼ一定の体重を維持し, 約40~45日間生存した。
(4) オオサカスジコガネとチビサクラコガネは摂食しなくても卵巣の発達がみられた。卵巣重量は両者とも羽化後6~9日目で最高に達した。個別で飼育した場合はその後一定の重量を維持した。一対で飼育した場合はその後急激に減少した。これは交尾, 産卵が行われたことによるものと考えられる。
ドウガネブイブイの場合は羽化後9日目まで摂食せず卵巣重量の増加はみられなかったが, 餌を与えた場合はその後急激に増加した。
(5) 蔵卵数の変化はオオサカスジコガネ, チビサクラコガネともに卵巣重量の場合と同様な傾向がみられた。
(6) 産卵数はオオサカスジコガネ, チビサクラコガネともに, 一対飼育した場合に羽化後9日目頃から増加し, 個別飼育の場合は, 少数の無精卵を産出した。数値的にはチビサクラコガネの方がオオサカスジコガネよりやや多い傾向がみられた。
(7) オオサカスジコガネ, チビサクラコガネの成虫は, 一対で飼育した場合, 飼育容器内で確実に交尾することが推察された。

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