抄録
コウライシバが優占する与那国島北牧場において, 海崖の縁2mの地点から内陸に向け約50m間隔で0.25m2の方形区を5カ所設け, 年間6回の刈り取り調査を行い乾物生産量の季節的推移を明らかにした。また, 放牧密度を推定し芝生の成立条件を検討した。
乾物生産量は, 2m地点で極端に少なく, 50m地点でも他の内陸部調査地点の半分以下となり, 著しい抑制が見られた。冬季の日乾物生産量は, 夏季に比べ減少するものの一定の生産量が維持されていた。
また, 年間生産量は約3.5t/ha/年と推定され, 放牧密度は牛馬合わせて約1頭/haと試算された。
以上から, 北牧場のコウライシバ草地の成立条件を考察すると, 海岸前縁部においては, 潮風による環境圧とコウライシバの適応能力が要因となり, 内陸部においては, 低温期にも一定量の生育を保つコウライシバの生育特性と適正な放牧圧が要因となると考えられる。