芝草研究
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傾斜地におけるシバおよびセンチピードグラスの生長, 土壌保全機能の系統および品種間差異
栢原 裕之小山田 正幸杉本 安寛
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2008 年 36 巻 2 号 p. 100-104

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抄録

牧場 (宮崎市田野町) の傾斜地にシバ4系統とセンチピードグラス2品種の苗を移植し, 土壌保全能力を比較する目的で, 植物体の初期生長, 土壌の浸透能および透水係数などの調査を行い, 以下の結果を得た。
1.苗の生存率は, シバよりセンチピードグラスで高く, それぞれ42.8~59.5%および84.5~92.8%の範囲であった (移植後97日目) 。
2.被度は, 苗を移植した翌年の4月から増加し, 11月にはシバで7.8~22.8%, センチピードグラスで17%程度に達した.シバのアソ系統の被度は, センチピードグラスのそれより高かった。
3.土壌の硬度は, 実験区では裸地と比較し, 有意に低い値を示した.しかし, センチピードグラスおよびシバの両草地問に明らかな差異は認められなかった。
4.土壌の浸透能は, センチピードグラス草地の2112~224.4mm/hに対し, シバ草地では331.8~370.84mm/hと高かった。土壌の透水係数もセンチピードグラス草地よりシバ草地で高く, それぞれ2.5×10-4~2.9×10-4cm/sおよび7.5×10-4~2.3×10-3cm/sの範囲であった。また, 実験区では裸地と比較し, 浸透能ではおよそ2~3倍であり, 透水係数ではおよそ10~100倍の値を示した。
5.初期生育の旺盛なセンチピードグラスは生存率および被度でシバよりも高い値を示したが, ほふく茎が地中にもぐり伸長するシバ系統は浸透能および透水係数の値がセンチピードグラスよりも高かった。以上の結果から, 初期生長段階の調査ではシバ系統がセンチピードグラス2系統と比較し, 草地の土壌保全上, 有用な系統であると推察された。

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