芝草研究
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芝草を加害するコガネムシ類の研究
VIIIウスチャコガネの生態と防除
奥富 一夫吉田 正義
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1976 年 5 巻 2 号 p. 151-159

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抄録

芝草の重要害虫であるウスチャコガネの防除に関する知見を得る目的でその生活史, 発生経過, 生態および各種薬剤の幼虫に対する防除効果等について調査した。
(1) 成虫が地上へ出現する期間は4月中旬~5月中旬で, その最盛期は4月30日であった。成虫は昼行性で, 雄は芝草の上を群飛し地上で交尾する。雌は産卵のため口中でも潜土する個体が多い。成虫の性比は雄2に対して雌1.1であったが, 芝草の上を群飛する個体はほとんど雄であった。
(2) 成虫の雌雄の体長はそれぞれ10.4mmと10.3mmであった。触角の片状部の大さは雄では1.75mm, 雌では0.74mmで, この長さを比較することにより雌雄を区別することは可能であった。成虫の寿命は14.2日であった。
(3) 芝草地に卵がみられるのは4月下旬~5月下旬の期間であった。卵期間は室温で22日, ふ化率は95%でせい一であった。卵の大きさは長径が1.38mm, 短径が0.96mmの楕円体であるが, 吸水成長をしてふ化近くなるとその体積は2.6倍に増大した。
(4) 芝草地ではふ化した幼虫は5月中旬頃から出現する。幼虫は芝草の根を食害して成長し2令虫は6月下旬, 3令虫は7月中旬頃から現れる。3令虫はさらに摂食して成長するが, 9月下旬以降になると摂食活動をやめて3令の後期に入り越冬する。幼虫の生息する土壌層は比較的浅く, 3令虫の場合でもその平均値は7cmであった。
(5) 野外で採集された幼虫の頭幅の頻度分布は0.95~1.20mm, 1.59~1.81mm, 2.41~3.15mmの3つの山が認められ, 幼虫は3令を経て蛹化した。1令虫は5月中旬~6月中旬, 2令虫は6月下旬~7月中旬, 3令虫は7月下旬~3月上旬に採集され, 3令は非常に長期にわたった。
(6) 蛹化は3月中旬頃から行われ, 蛹期間は20℃で18日, 羽化率は80%であった。
(7) 芝草地でこの虫による被害が明らかになるのは芝草の新芽が伸びる4~5月の頃で, 草丈の高い芝草が白く枯れあがりそこに成虫の群飛がみられるようになって始めて被害に気付くのであるが, この被害は一般には見過されがちである。被害を受けた芝草地を刈れば枯れた跡地が斑点状になって現われるため, 病斑と混同され易くその被害は意外に大きい。
(8) 日中芝草の上を飛翔している成虫はほとんど雄であって, この雄の飛翔が目立つようになって始めて殺虫剤散布が行われている実状である。この時期における薬剤散布では遅きに失するわけである。この虫の防除を行うには成虫の発生の初期から残効性の強い農薬を散布するとか, 散布回数を増加する方法をとって雌を対象に防除を行う必要がある。
(9) この虫の若令幼虫の生息する土壌層は比較的浅いので, 5月中旬~6月中旬の期間これらの若令幼虫に対してダイアジノン, スミチオン, カルホスの各乳剤の1000倍液を1m多平方当り2l散布することにより, 幼虫の防除も可能と思われる。

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