芝草研究
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富士山の森林限界付近の植生
斎藤 全生
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1980 年 9 巻 1 号 p. 5-12

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抄録

(1) 森林限界の最高所は山梨県側では前谷沢頭の標高2, 900m, 静岡県側では小沢の標高2, 860mである。
(2) 森林限界付近の森林はカラマツ林, ダケカンバ林, ミネヤナギ低木林, ミヤマハンノキ低木林の4つに分けることが出来る。侵入当初のカラマツは匍匐して低木林を形成するが後に主軸が立ちはじめカラマツ本来の姿である高木林に移行する。
(3) 先駆樹として侵入したカラマツ, ダケカンバ, ミヤマハンノキ, ミネヤナギもそのうちにオオシラビソ, シラベ, コメツガなどの森林に移行する。
(4) ダケカンバ15本, カラマツ74本, シラベ16本, コメツガ4本, ミネヤナギ1本, 計110本について樹齢を測定したところ, 大沢~小御岳間に200年生以上のものが圧倒的に集中していた点から見て, この区間は200年以前に侵入がはじまり各方位中一番古く森林が形成されていた。
(5) 須走登山道~宝永山噴火口の西側山稜までの間は砂礫の移動がはげしいため侵入が遅れ森林限界が下方にあると言われている。その他に空気の渦が出来て植物の種子が太郎坊付近まで飛ばされて沈着し得ないのも森林限界の低い理由の1つである。

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