猪苗代湖における大正時代の観測によれば,水深14m付近で一日の間に水温が10ºC 以上も変化した.これは内部静振の存在を示唆しており,それもかなりの規模であることが分かる.内部静振は湖全域にわたる変動であり湖内の水質を大きく変化させる効果を持つ.したがって,内部静振の諸特性・湖水に与える影響の解明が重要である.しかし,現在のところ十分な観測例があるとは言えない.そこで本研究では猪苗代湖に注目し,湖内の数点において多層にわたり水温計を設置して内部静振の観測を試みた.その結果,成層の衰退と強い季節風の影響により,長軸方向の大規模な内部静振が発生することを確認した.温度場の可視化から,この内部静振後には水温躍層が破壊され,湖水混合が促進されることが確認された.このように,内部静振による水温躍層への影響を具体的な観測として捉えるために,温度場の可視化が有効であることが示された.