近年,血液循環器系疾患のうち,脳卒中の要因となる脳動脈瘤破裂による死亡率が高まっている.脳動脈瘤は,血管の分岐部など流れの急変する特定の位置に発生しやすく,脳内では脳底部のウィリス輪とそれに直結する主要大動脈の接合部が主な脳動脈瘤発生の位置であり,2本の前大脳動脈のどちらか一方で血流量の不均衡が起こった場合,前交通動脈はその不均等を補うバイパスとして機能する.脳動脈瘤の発生・進展・発達過程には血液の流れ場における流体力学的要因と瘤の形状を表すアスペクト比AR(動脈瘤の深さ/動脈瘤のネック径)の関係が重要視されている.本研究では,アクリル製対称モデルで,動脈瘤を持たない健常と考えられるモデルと,進展過程に伴う5種類のアスペクト比の動脈瘤を設けたモデルを用い,動脈瘤近傍および動脈瘤内の流れ構造の変化をPIVを用いて可視化し,アスペクト比の変化に伴う流れ構造の変化を血行力学的視点から検討する.