可視化情報学会論文集
Online ISSN : 1346-5260
ISSN-L : 1346-5252
大規模ベクタ場可視化向け3次元並列線積分畳込処理の性能向上を目的とした粗格子前処理を用いた負荷分散手法
ノナカ ジョルジ酒井 晃二金澤 正憲小山田 耕二
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 26 巻 5 号 p. 33-42

詳細
抄録

線積分畳込法(LIC)は,強力なベクタ場可視化手法として広く実用性が認められている.しかしながら,この手法は多大な計算機能力とメモリリソースを必要とする.領域分割による並列分散処理は,この様な計算対象において効果的であると認識されているが,LICに関してはベクタデータの分布によって負荷分散が不均一となる可能性がある.この原因として,境界や特異点を含む領域ではLIC計算に用いる流線が途中で寸断されることなどがあげられる.負荷分散を均一化するための前処理として,格子毎の計算量分布を評価することが必要となるが,全格子を対象とした前処理は現実的ではない.そこで,本論文では前処理としてサンプリングされた格子においてLIC計算を実施し,その結果に基づいて領域分割を行う負荷分散手法を提案する.提案手法のサンプリング格子は,全格子の一部であるため前処理コストは全LIC計算コストに比べて格段に小さい.また,前処理でのLIC計算結果は,元のボリュームデータを利用するため,本計算において再利用することが可能である.このため前処理のオーバーヘッドを軽減することが期待できる.さらに,この手法は入力データおよびLICアルゴリズムに変更を加える必要がないため,現在提案されているLIC拡張手法との併用も期待できる.我々は,分散メモリ型並列計算機環境において,この負荷分散手法を様々な格子サイズで検証し有効性を示した.

著者関連情報
© 2006 by the Visualization Society of Japan
feedback
Top