2007 年 27 巻 3 号 p. 15-21
バクテリアは,らせん形をしたべん毛繊維を回転させて水中を遊泳する.べん毛の働きは,スクリューに当たる.べん毛の正確な形状を観測することは,その微小なサイズと高速回転故に容易ではなかった.本論文では,レーザー暗視野顕微鏡を用いて,べん毛のらせんパラメータを計測する方法を提案し,サルモネラ菌へ適用した結果を示す.らせん形のべん毛を,らせん軸に対して45°または90°の方向からレーザービームで一方向照明すると,べん毛の像が一周期に1個または2個の輝点の列となる.そのような像を,電子シャッターを備えた高感度CCDカメラを使って記録した.記録した輝点の間隔を読み取ることで,菌体から脱落したべん毛(回転していない)のらせんピッチと半径を求めることができた.同様にして菌体上で高速回転するべん毛に関しても,ピッチの値が求まり,その微小な変化を捉えることもできた.