本論文では,投影型複合現実感技術を用いた熱画像の新たな可視化手法を提案する.提案手法ではまず,赤外線カメラから取得された熱画像に幾何学補正(位置合わせ)処理・色補正処理を施す.次にこれをプロジェクタから直接実世界の対象物体に投影し光学重畳することで,ユーザに対象物体の温度分布情報を提示する.提案システムでは,温度分布が対象物体上にあたかも浮かび上がるかのような効果をユーザに与えることができる.これによって,「ディスプレイ空間」(熱画像を提示する空間)と「対象空間」(対象物体の存在する空間)とが3次元空間の中で一致し,実対象物体上でより直観的にその温度分布を把握することが可能となる.本論文では,幾何学補正処理・色補正処理の各手法を提案し,実際にシステムを構築して実験を行い,提案手法の有用性を確認した.