数値計算により被災メカニズムを詳細に予測することが可能となった一方で,これらの研究成果は実際の津波防災の現場において十分に活用されていない.その主な原因としては,津波情報の複雑化に伴い,行政の災害対応や市民の防災教育では,それらのリスク情報を直感的に把握することが困難となっていることが挙げられる.このような背景から本研究では,マーカー型AR技術を活用した津波リスクの可視化手法を開発した.それぞれのマーカーに,津波想定結果や一時停止機能,さらに地盤,水域,道路,構造物などの詳細都市モデルの情報を関連付けた.そしてカメラ内蔵メガネを使用することで,マーカーに対応するCGが現実世界に投影される.災害図上訓練などで使用することにより,多数の人が同時に,様々な方向からシナリオ毎に変化する津波の浸水状況などを確認でき,防災情報の共有が可能になると考えられる.