2016 年 48 巻 1 号 p. 209-216
図画工作科での子どもの造形表現活動の過程では,つくり変えられていくものと子どもとのあいだに現れ,子どもの造形行為の根拠となって造形行為の生成を支える〈場〉が存在する。このような〈場〉は,場面や機会,空間としてではなく,主体性をもった連続的なはたらきとしてとらえることができるものであり,本研究では生命的な〈場〉とする。本研究の目的は,生命的な〈場〉が造形行為と子どもの感じ方や考え方や表し方の双方の生起と生成に,どのような関係と働きを有しているのかについて明らかにすることにある。研究の方法として,生命的な〈場〉のモデルを形成した上で,このモデルの視点より先行研究や文献の考察を行った。研究の結果として生命的な〈場〉が造形行為を生成しているばかりでなく,子どもの感じ方や考え方や表し方を成り立たせていたことが明らかとなった。また造形行為にはノエシスとノエシスが連鎖的かつ重層的に生起する〈場〉が生成している可能性が明らかとなった。