美術教育学研究
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作品の情趣と鑑賞法の違いがもたらす主題感受のあり方
―中学3年生におけるミレー作『種をまく人』とゴッホ作『種をまく人』の比較鑑賞を通して―
立原 慶一
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2017 年 49 巻 1 号 p. 225-232

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抄録

生徒は比較(ゴッホ作品)鑑賞法に導かれて,心のあり方や生き方への共感的主題を,より多く感受できた。この結果を見ても,比較をしない鑑賞法に比べて本方法論の方が,より大きな教育的効果をもたらすことが分かる。それは中学校学習指導要領美術編が何よりも標榜する,「心豊かな生き方や生活」への誘いとなる性格のものといえよう。「距離感」は作品の造形的特徴から感受される情趣の一つだが,それは全33名中合計のべ5名(15.2%)の生徒に対して,生き方論的情感を主題として把握させた(表3参照)。「臨場感」の場合は全45名中合計のべ11名(24.4%)(表2参照),「力動感」の場合は全40名中合計のべ16名(40.0%)に感受させた(表1参照)。情趣における性格の違いが鑑賞体験の教育的な意義を決定づけるのである。

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© 2017 大学美術教育学会
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