2020 年 52 巻 1 号 p. 329-336
昭和初期に,自由画教育運動が下火になる中で,地方のいくつかの学校では臨画教育ではなく児童・生徒の身の周りに目を向け生活を描かせる想画教育が行われていた。三大想画実践校の1つ山形県長瀞校の想画教育についてあらためて再考し,その教育が継承され,現在の長瀞小学校において教育実践されている経緯を調べると共に,その教育的意義を明らかにした。長瀞校の想画教育は,子供らを取り巻く家庭や生活に目を向けさせることを教育理念として,1教科の枠を越えた教科横断的な教育実践の取組みであった。それが,現在の長瀞小学校の教育にも継承され,児童たちは自然や生活を見つめ複数の教科をとおして俳句・書写・想画として表現され,地域の人々に認められる充実した教育活動となっていた。