本論は,幼児期における色彩教育の研究動向について考察する。先行研究は,「発達」「嗜好」「教育」の範疇で分類することができるが,現在の研究成果は,単発的で現状の把握にとどまり,教育の改善を目的とした研究が不足していることが明らかになった。先行研究の概観からは,幼児期における色彩教育の枠組みでさえ不明瞭である印象を受ける。そこで,研究成果と今後の課題を整理しながら,包括的な枠組みを提示する。幼児期の色彩教育は,「生活体験」「造形活動」の2つの観点によって捕捉が可能である。「生活体験」と「造形活動」に関しては,螺旋状の循環性を重視する必要があり,生活体験に基づいた造形活動が生活体験の一部となることが効果的であると考えられる。以上の直観的な論述は理論的な裏付けが必要である。本論では,今後求められる研究及び保育実践の方向性を示す。