本論文は東アジアと東南アジアを対象にして,グローバル化した今日の美術教育を考えるために,近代・現代の美術において伝統文化と西洋文化の関係を,四層の構造化を仮説として考察を進めた。考察地域は,日本,台湾,韓国,シンガポール,マレーシア,インドネシア,ベトナムとした。アジアの諸地域は民族の伝統文化を有しており,そこに西洋文化が影響を及ぼした。その関係は融合,対峙など地域による違いが見られる。台湾,韓国は日本が統治していた経緯があり,西洋美術の影響は間接的であった。東南アジアは植民地により,直接影響があった。考察の結果として以下のことを明らかにした。四層構造の時期的なものは地域によって異なるが,構造は同じである。四層は積層され,その総体が美術教育の対象となる。美術教育の創造性育成の機能はこの総体の中で,時間と空間から新たな発想を生み出すことができる。