2023 年 55 巻 1 号 p. 41-48
本稿は,表現・図画工作・美術の教育支援策の開発を目指す研究の一環として,描画表現のつまずきに対するアプローチ時期と要因を検証しようとするものである。本調査では,保育者養成校の学生310人を対象とした質問紙調査から,幼児期から青年期に至る描画表現への意欲の変化とつまずきの要因を検討した。その結果,意欲低下のタイミングから10パターンの類型が示され,小学生の時期に意欲が低下するケースが全体の4割以上を占め,回復率が他の類型よりも低いことがわかった。また,意欲の高さや回復率にかかわらず,全体の8割以上が描画表現にたいするつまずきを経験していた。Jaccard係数による特徴語の抽出から,小学生期におけるつまずき要因が「自分と周囲の比較」にかかわる特徴語である一方,中学生期には「教師や成績」,高校生期には「機会の減少」と分類され,発達過程や時期によるつまずき要因の違いが示された。