本論は,美術の授業において,教員から与えられた工業規格の支持体を用いる描画活動と,表現者となる生徒自身が形状を決めた支持体での描画活動との,それぞれの活動の傾向を明らかにすることが目的である。中学校の授業で,画用紙を配ってから描画する活動と,ロール画用紙を生徒が任意の形に切り取ってから描画する活動とを行い,質的に分析した結果,(1)与えられた工業規格(長方形)の支持体を使用する生徒は,予備知識や既知の技法を使って表現したいことをまとめ上げようとする傾向,(2)自己決定した支持体を使用する生徒は,主題を画面中央に構成する傾向が見られた。特に長方形以外に形状変更した生徒は,新しい表現技法を試す傾向も見られた。生徒に培いたい資質・能力に合わせて支持体への関与を変えさせることで,主題表現の位置や内容等を教員が理解した上での生徒の表現活動への伴走に効果がある可能性が示唆された。