2025 年 57 巻 1 号 p. 265-272
複雑化した社会の中でアートによる社会関与がこれまでになく求められており,アートの文脈ではすでに活発に実践が行われているにも関わらず,「社会に開かれた教育課程」が目指される図画工作・美術科においては社会との関わりが十分になされていない状況にある。よって本論は,社会に開かれた美術教育の必要性が高まっていることを踏まえ,美術教育とアートを架橋するにあたり前提となるアートの本質について再検討することを目的とする。本論では,美術教育の基礎理論構築を目指した動向の考察を通して,現実の人間の生や社会と連動するというアートの本質をこそ,前提となる重要な核として示した。また,日本におけるアートのねじれを整理することによって,その本質をはらむ文脈を提示した。さらに,アートの変化をめぐる議論を参照し,美術教育の社会的教育的価値,教育課題に果たす役割の増大についても捉えた。