人間と環境
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吉田松陰における「生」の意義と理想的「死」の認識
川口 雅昭
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2017 年 8 巻 p. 107-124

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抄録

吉田松陰における「生」の意義、また、松陰がどのような「死」を理想と認識していたかを 論考した。  その結果、松陰における「生」の意義は、「義」の実践にこそある。これは『孟子』を中心と する古代中国の経書より学んだ。また、志士的活動に失敗を重ね、教育的活動に目を向けざる を得なかった松陰には、政治的活動に失敗を重ね、教育的成功を収めた孟子は、「憧憬」の対象 にまで高められた。また、吾が国の先哲では楠木正成を理想として、それは、「同一化」のレベ ルにまで意識された。  一方、「義」の実践の結果、迎えるであろう「死」に関し、松陰が理想としたのは、これまで の研究で、是とされてきた「従容の死」ではなく、「慷慨の死」である。これは『靖献遺言』に ある謝枋得の漢詩からの造語と思われる。松陰の言葉でいえば、「従容の死」=「苦死」、「慷慨 の死」=「甘死」であること等を解明した。

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© 2017 人間環境大学
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