都市地理学
Online ISSN : 2434-5377
Print ISSN : 1880-9499
論説
社会主義後のプラハにおけるジェントリフィケーション
藤塚 吉浩
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2019 年 14 巻 p. 28-37

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抄録

本稿では,社会主義後のプラハを事例に,ジェントリフィケーションに関して次の3 点を明らかにした.第1に,都市の内部構造について,旧市街では地域住民の減少が大きい一方,裕福な住民や外国人が増加した.保存されている歴史的建築物が観光客向けの店舗やホテルに再利用されるという,ツーリズムジェントリフィケーションの影響がみられた.第2 に,歴史的市街地では歴史的建築物が保存されているため,景観に大きな変化はないが,機能の変化に合わせて建物は改変されることを明らかにした.オフィス需要の増大は,歴史的な建築物の再利用だけでは満たすことができず,歴史的市街地の周辺にオフィスビルが開発され,新しい景観がつくられるとともに,ジェントリファイアーを生起する要因となった.第3 に,ヴルタヴァ川のリバーフロントでは共同住宅開発が進められてきたが,そのうち付帯施設の充実した住戸は価格が高く,外国人,特にロシア人を主な顧客としており,グローバリゼーションの影響が看取できた.これらの共同住宅は,洪水地帯に開発された旧河川港に面しているため,浸水のおそれがあることを指摘した.

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© 2019 日本都市地理学会
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