本研究では臨床工学技士を目指す学生のために仮想空間を用いて他職種の医療従事者に対して,医療機器の説明を疑似的に経験できるシステムのプロトタイプを検討したので報告する. 臨床工学技士は,主に病院内の機器を対象に保守管理・点検を行うことを業とする医療従事者の一種である.病院内の機器は様々なものが存在するが,実際に使用するのは医師や看護師など他職種であることが多い.そのため,アラームや故障などのイベントが起こった際には臨床工学技士が出向いてそれらのスタッフに説明を行う場面がよく見られる.一方で臨床工学技士は養成校ではコミュニケーションを学ぶ機会が少ないため,十分なトレーニングを受けられないまま臨床現場に出ている現状がある.そのため,本研究を用いて学生の間に疑似的に医療機器に関する会話内容を体験・学習することで,臨床現場における対応力の向上やチーム医療への貢献につながると考えられる.