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植生学会誌
Vol. 13 (1996) No. 1 p. 25-35

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http://doi.org/10.15031/vegsci.13.25

原著論文

  1.サハリン南部に分布するエゾマツ-トドマツ林に焦点を当て,その量構成や組成,植生地理学的位置づけ,成立機構を,現地調査結果に既存の文献資料を併せて考察した.
  2.サハリン南部では針広混交林が主体と従来から言われてきたが,実際には,エゾマツ-トドマツ林が優占し,落葉広葉樹はわずかに点在するのみである.エゾマツ-トドマツ林の量的構成や組成は北海道のものとよく類似する.
  3.シュミット緑はフロラの境界としては重要で,それ以南のサハリン南部は植物区系的には北海道と同様である.しかし,森林相観の面からは,サハリン南部は低地から常緑針葉樹林が優占することが特徴で,このことが北海道とは大きく異なる.なお,シュミット線以北のサハリン北部は南部とはフロラ,森林相観ともに異質の地域で,グイマツ林が優占することで特徴づけられる.
  4.サハリン南部のエゾマツ-トドマツ林は北東アジアでは珍しい,低地に広がる常緑針葉樹林で,北半球に広がる常緑性の亜寒帯針葉樹林と相同の植生と見なすことができる.いっぽう,北東アジアでは,基本的には,低地の亜寒帯針葉樹林は落葉性のカラマツ林が主体である.そのため,北東アジアの亜寒帯は,北米大陸やヨーロッパの北部や西シベリアの低地と植生地理学的に全く相同とはいえない.
  5.サハリン南部のエゾマツ-トドマツ林は,宗谷海峡における落葉広葉樹の衰退,および,シュミット線以北におけるトドマツの衰退に対して,エゾマツが一定の生長量を確保していることが重なり合った結果,成立したものである.北東アジアに限っていえば,北に分布するグイマツ優占林と南に分布する針広混交林との間に現れたものである.

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