植生学会誌
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原著論文
伊豆諸島八丈島と南九州の植生垂直分布の比較および八丈島の植生にみられる生態学的特質
上條 隆志
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13 巻 (1996) 2 号 p. 59-72

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抄録

  1.伊豆諸島八丈島の垂直分布と遷移ならびに主要構成樹種のニッチ拡大をあきらかにするために,種が豊富で八丈島と気候的,地質的に類似している南九州の黒島(更新世火山)および開聞岳(完新世火山)との間で,垂直分布の比較研究をおこなった.
  2.八丈島の八丈富士(完新世火山)ではタブノキ林が優占していたのに対して,三原山(更新世火山)ではスダジイ林が優占し,山頂部周辺のみにタブノキ林が分布していた.このような分布様式は,大局的にはタブノキ林からスダジイ林への遷移的関係により成立しているものと考えられた.
  3.開聞岳や黒島と比較すると八丈島のスダジイ,タブノキならびにヒサカキは,カシ類を欠くことによって垂直的な優占域の拡大,すなわち,その垂直的なニッチを拡大していた.特に,三原山山頂部周辺のタブノキ林は,カシ類の欠如によるタブノキの優占域拡大により成立した特異的な森林タイプと考えられた.
  4.種の垂直分布パターンは,八丈富士と開聞岳,三原山と黒島とは異なっていたのに対して,生活形の垂直分布パターンは類似していた.いずれも山頂部は常緑小型葉樹が多くなるが,新しい火山(八丈富士と開聞岳)でより顕在的になっていた.このことから生活形の垂直分布はフロラが異なっても,類似した環境下では一定のパターンを示すものと考えられた.
  5.以上のように,八丈島では,カシ類をはじめとする樹種が欠けることによって,それらの種が占めていた分布域を島に生育する他の樹種(スダジイ,タブノキ,ヒサカキ)が埋めること,すなわち,島に生育する種のニッチの拡大が生じていることがあきらかになった.

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© 1996 植生学会
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