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植生学会誌
Vol. 14 (1997) No. 1 p. 61-74

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http://doi.org/10.15031/vegsci.14.61

原著論文

土中営巣性の海鳥であるオオミズナギドリは,西太平洋の中緯度海域の島嶼を中心に集団繁殖している.日本では島嶼の照葉樹林や草地などで繁殖しているが,林床での営巣活動,夕方から早朝までの徘徊および移動,糞尿排泄などオオミズナギドリの諸行動は繁殖地の植生に様々な影響を与えていると考えられる.そこで三重県大島の照葉樹林(スダジイ-オオシマカンスゲ群集)においてオオミズナギドリの営巣が植生に及ばす影響を調査した.本調査地(大島)におけるオオミズナギドリの巣穴密度は低く(6.0±2.0/100^2),巣穴構造も発達したものではなかった.巣穴は根系の下(とくに大径木)に多く掘られ(62.2%),高密度営巣地である御蔵島では,巣穴がランダム分布するのに対し,大島では集中分布を示した.オオミズナギドリの営巣立地と非営巣立地の植生は変群集レベルで相違が見られ,大島のスダジイ-オオシマカンスゲ群集はアリドオシとヒサカキを区分種とするアリドオシ変群集(非営巣立地)とオオツヅラフジ,クズ,コウモリカズラ,ヤブミョウガ,キブシ,メジロホオズキ,ツクシキケマン,ツユクサを区分種とするオオツヅラフジ変群集(営巣立地)とに下位区分された.各変群集について生態的属性を比較した結果,両変群集の間にはヤブツバキクラス標徴種の比率,休眠型(地表植物および1年生植物),草本層の種数,高木層の植被率においてそれぞれ有意な差異が認められた.また営巣立地では,巣穴付近で植被率の著しい低下が生じる一方,ノイバラクラスの林縁植物の侵入および繁茂が見られるなど,オオミズナギドリの営巣活動による植生構造および種組成への影響が明らかにされた.三重県大島(低密度営巣地)と京都府冠島(高密度営巣地)の植生構造との比較により,オオミズナギドリの営巣立地選択性についての考察を試みた.

Copyright © 1997 植生学会

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