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植生学会誌
Vol. 14 (1997) No. 2 p. 129-139

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http://doi.org/10.15031/vegsci.14.129

原著論文

  1.シホテーアリニ山脈北部を西流するアニュイ川流域の森林植生を,主要林冠優占種の変化に着目して,上流部から下流部にかけて300kmに渡ってゴムボートで川下りしながら観察した.アニュイ川流域はこれまで詳しい植生状況がほとんど知られていなかった地域である.
  2.林冠優占種に基づいて区分すると,移行帯も含めて以下の4タイプの森林帯が上流から下流に向かって識別できた : グイマツ優占林帯,エゾマツ優占林帯,チョウセンゴヨウ-エゾマツ-トウシラベ林帯,チョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林帯.樹木分布の上での大きな特徴はチョウセンゴヨウが広い範囲に渡って量的に多く分布し,最も主要な森林構成種となっていることである.
  3.北東アジアの水平分布と対応させると,アニュイ川流域の森林垂直分布の特徴は,水平的には接しているチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林とグイマツ優占林との間に,エゾマツ優占林が割り込んでいることである.このことの背景として,アニュイ川が流れるシホテ-アリニ山脈の西側は地勢的に大陸部の平地から沿岸部の山岳域に移り変わる地域に当たり,大陸部では欠けているエゾマツが現れ出すことが挙げられる.
  4.アニュイ川流域の森林分布を北海道の森林分布と比較すると,エゾマツ優占林が共通する以外は,両者はかなり異なり,北海道の方がより複雑である.これは,北海道が海洋性気候の影響を受けていることによるものと推察される.
  5.アニュイ川流域のチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林は我が国における最終氷期以来の植生変遷を理解する重要な鍵となるものである.
  6.最後に,アニュイ川流域の森林を慎重に保護することの重要性を指摘した.

Copyright © 1997 植生学会

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