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植生学会誌
Vol. 16 (1999) No. 1 p. 83-97

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http://doi.org/10.15031/vegsci.16.83

総説

  1.北東アジアの北方林域を対象に,主として沿岸から海洋域にかけての森林分布を整理し,優占樹種の生態的性質の変化に着目して森林の境界を類型化した後,それぞれの森林境界決定機構を考察,展望した.
  2.北東アジア北方林域における森林分有は複雑で多様である.内陸域ではグイマツが広い面積にわたって優占する.沿岸域では,南部ではチョウセンゴヨウが優占するが,北にむかうとエゾマツの分布量が増加し,さらに北ではグイマツ林に移行する.海洋域では落葉広葉樹優占林が広がり,サハリンではエゾマツ優占林となる.エゾマツ優占林は山岳中腹斜面に分断,点在し,低地では分布が少ない.さらに海洋度が著しいカムチャッカ半島ではダケカンバ林が分布する.
  3.陽樹が広範囲にわたって植生帯の主要構成種となっていることが特徴である.大陸部でのグイマツ,カムチャッカ半島におけるダケカンバ,沿海地方におけるチョウセンゴヨウがその例である.そのなかでも,グイマツ優占林の広がりが大きい.
  4.森林境界は主なもので6タイプあり(モンゴリナラ-エゾマツ,チョウセンゴヨウ-エゾマツ,エゾマツ-グイマツ,チョウセンゴヨウ-グイマツ,エゾマツ-ダケカンバ,ダケカンバ-グイマツ),境界構成優占樹種の生態的性質はそれぞれ異なった変化をみせる.各タイプごとに個別に境界決定機構を考察した.
  5.以上をまとめると,北東アジア北方林域では,大陸度-海洋度の傾度が著しく,永久凍土が沿岸域近くにまで分布し,さらに,沿岸,海洋域では山岳地形が卓越する,という自然環境が複合的に作用して,陽樹,特にグイマツ優占林の広がりが大きい森林分布が成立すると推察される.いっぽう,ヨーロッパや北米大陸東部の北方林域では普通な,落葉広葉樹林-常緑針葉樹林という移り変わりは,冬季に比較的温暖かつ湿潤な地域に限られるため,それが現れる分布域は広くないのであろう.
  6.最後に,以上のまとめには未だに多くの推論が含まれているので,今後より多くの現地植生調査を進めて行くことが必要であると共に,光合成を中心とした生理生態学的な研究も重要であることを指摘した.

Copyright © 1999 植生学会

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