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植生学会誌
Vol. 17 (2000) No. 2 p. 55-72

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http://doi.org/10.15031/vegsci.17.55

原著論文

  1.長野県梓川上流域の上高地に分布するウラジロモミ林について,植物社会学的方法による調査を行った結果,2群落6下位単位が区分された.
  2.調査地の各スタンドの種組成からオーダーの標徴種・識別種を抽出し,上級単位の所属を考察した.さらに既存の資料と常在度表で比較した.その結果,上高地のウラジロモミ林は,一部にコケモモ-トウヒクラスの影響もあるものの,全体的には湿性かつ撹乱要素の強いブナクラスのシオジ-ハルニレオーダーに所属し,ハルニレ型といえる.一方,既存の資料に含まれる八ヶ岳周辺や富士山のウラジロモミ林はササーブナオーダーの標徴種・区分種によって区分されたミズナラ型に属し,上高地とは異質の群落と考えられた.
  3.ウラジロモミ林の植生調査地点で地形,表層砂礫の粒径,礫種などを調べた結果,ウラジロモミ林の成立する地形は河畔流域の砂礫堆積地であった.コメツガ-ウラジロモミ群落は梓川の支流が形成した沖積錐と谷底平野に,ハルニレ-ウラジロモミ群落は梓川本流が形成した氾濫原上に成立していた.
  4.コメツガ-ウラジロモミ群落の下位単位には,堆積地形を構成する砂礫の粒径および礫種,傾斜,撹乱頻度が影響し,特に穂高安山岩類(溶結凝灰岩)の巨礫からなる立地にシラビソ-トウヒオーダーの種を多く含むゴゼンタチバナ下位単位が成立していた.一方,花崗岩のマサ土から成る立地にはコウモリソウ下位単位が成立し,区分種は撹乱地に多く見られる種であった.
  5.上高地には最終氷河期のモレーンや,凍結融解作用によって形成された豊富な砂礫の供給源があり,それらが支流出口や梓川本流に運搬され堆積した地形に,ウラジロモミ優占林が成立していた.
  6.山地帯最上郡の砂礫堆積地形は中部山岳地域・火山地域に偏在して見られ,そのような地域に,適潤地性のブナにかわって生態的生育域の狭い種であるウラジロモミが優占する傾向があり,ウラジロモミ亜帯(大場ほか1979)の存在が考えられる.

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