植生学会誌
Online ISSN : 2189-4809
Print ISSN : 1342-2448
原著論文
土中営巣性海鳥生息地におけるタブノキ実生の初期生長
前迫 ゆり
著者情報
ジャーナル フリー

19 巻 (2002) 1 号 p. 33-41

詳細
PDFをダウンロード (1833K) 発行機関連絡先
抄録

  1.タブノキの実生サイズと土中営巣性海鳥であるオオミズナギドリによる林床撹乱との関係を明らかにするため,オオミズナギドリ営巣地(京都府冠島)と非営巣地(京都府蛇鳥)においてタブノキの実生の高さと葉面積を測定するとともに,冠島においてタブノキ落果前の6月に保護区と非保護区各20プロットを設定した.比較のため,8月に冠島で採取したタブノキの液果を実験的に播種した.これらの実生群間における実生サイズの比較検討により,生物による林床撹乱と実生サイズの関係を考察した.
  2.播種実験において,タブノキの当年生実生は休眠することなく発芽し,初期成長過程のなかでは発芽後30日間の伸長生長速度がもっとも速かった.この時期はオオミズナギドリの巣穴補修活動・育雛活動にあたり,林床撹乱が活発な時期(8-9月)に相当する.
  3.冠島に設定した非保護区の当年生実生の高さは保護区に比べて有意に低いことが明らかにされたが,葉数は保護区と非保護区で有意差は認められなかった.
  4.タブノキの1年生以上の実生の葉面積(実生あたりの緑葉面積)の頻度分布は,冠島の実生群が逆J字型分布,播種実生個体群と蛇島実生個体群で正規分布型を示し,またそのレンジは冠島において顕著に低い値を示した.
  5.実生の高さ,葉長,葉幅,葉面積を冠島(営巣地),蛇島(非営巣地)および播種実験のタブノキ実生群で比較検討した結果,タブノキ当年生実生の伸長時期にオオミズナギドリによる物理的撹乱が働くことによって,その後の実生生長における伸長生長および葉面積の減少をもたらしていることが示唆された.

著者関連情報
© 2002 植生学会
前の記事 次の記事

閲覧履歴
feedback
Top