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植生学会誌
Vol. 20 (2003) No. 1 p. 43-54

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http://doi.org/10.15031/vegsci.20.43

原著論文

  1.西暦937年,富士山の噴火の際に流出したとされる,剣丸尾溶岩流上には広い範囲にわたってアカマツのほぼ純林が形成されている.この群落は一次遷移系列上の先駆群落とみなされて来たが,その成因は明らかでない.このため,本研究では群落生態学的な現地調査と周辺の土地利用に関する文献調査からその起源を明らかにすることを目的とした.
  2.標高約1030mに設置した永久方形区での群落調査から,アカマツの直径階分布は20-25cmのクラスにピークを持つ一山型で,その密度は高かった.また,階層構造としてはほぼアカマツだけの林冠層とソヨゴを中心とする亜高木・低木層の明瞭な二層構造となっていた.
  3.アカマツの最大樹齢は90年で,その樹齢は直径サイズに関係なくほぼ80-90年生でそろっていた.
  4.剣丸尾周辺の森林利用の歴史についての文献調査により,江戸時代から剣丸尾上の植生は入会地として住民に利用されていたことが明らかとなった.また明治時代には剣丸尾周辺には桑畑が広がっており,養蚕業のためにかなりの濫伐が行われたと考えられた.
  5.その後,剣丸尾上の一部は1915年に恩賜林組合によって柴草採取区域に指定され適切な入会地管理がなされたため,これ以降に一斉にアカマツが侵入したものと考えられた.さらに1934年に部分林に再設定された際に雑木除去によるアカマツの天然更新施業が行われ,その後1960-70年代まではアカマツ林の林床植生は柴草として利用されていた.
  6.このように剣丸尾アカマツ林は溶岩流出後の自然の一次遷移系列上にある先駆群落とは異なり,長年の人為的な攪乱により遷移が停滞していた立地に,攪乱停止後に成立したアカマツ林である.また1934年の雑木除去と1960-70年代までの下層植生の利用が,現在のアカマツ林の林分構造に大きく影響していた.

Copyright © 2003 植生学会

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