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植生学会誌
Vol. 21 (2004) No. 1 p. 27-38

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http://doi.org/10.15031/vegsci.21.27

原著論文

  1.沖積平野におけるハルニレ実生の定着に対する河川攪乱の役割を明らかにするため,長野県上高地の梓川の氾濫原および沖積錐末端部において,実生と稚樹の生育立地を,共存樹種であるヤチダモと比較しながら調査した.
  2.ヤチダモの実生は,河原の砂礫堆など乾燥しやすいと考えられる立地には発生していなかった.これを除けば,両樹種の実生は地表攪乱地,非攪乱地にかかわらず広い範囲の環境条件に対応して発生していた.
  3.河川攪乱を受けず,草本層の植被率が高い後背地のハルニレ林に発生した実生は,両樹種ともに発生1年後までにすべて消失していた.河原の砂礫堆に発生したハルニレの実生も,増水や乾燥のため4年後までにほぼすべてが消失した.
  4.稚樹生育地の環境条件は,実生のそれに比べてより狭い範囲に限定された.ハルニレの稚樹はヤナギ類やタニガワハンノキなどの林内に限って生育し,ヤチダモの稚樹はこれらに加えて,ハルニレ林内の流路跡などに生育していた.
  5.両樹種の稚樹の樹齢は,林冠を構成するヤナギ類やタニガワハンノキより10年から35年ほど若く,稚樹としての定着は,先駆樹種の林分が形成された後であった.
  6.ハルニレの稚樹はおもに先駆樹林下の砂質の土壌に定着しており,砂の堆積をもたらし,林床植生を比較的広範囲に破壊するような地表攪乱が稚樹の定着に先行しているものと考えられた.

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