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植生学会誌
Vol. 21 (2004) No. 1 p. 39-50

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http://doi.org/10.15031/vegsci.21.39

原著論文

  1.太平洋側では広葉草本種の出現割合が高いタイプのブナ林が存在するが,日本海側にはそのようなタイプのブナ林は存在しない.このようなブナ林群落の地理的分化の背景を検討するために,東日本太平洋側の2つのブナ林亜群集に出現する維管束植物が,日本海側のブナ帯において,どのような立地環境に生育しているのかを,地形との関係で把握した.
  2.太平洋側2地域,日本海側2地域のブナ帯において植物社会学的植生調査を行い,同時に地形条件の記載を行った.微地形単位を頂部緩斜面,山腹斜面,谷,小谷の谷壁斜面の4つに区分し,各微地形単位毎に植生調査資料をまとめ,ブナ林に出現した維管束植物種の生育立地を地域間で比較した.その結果,生育立地のパターンから8つの種群が認識できた.
  3.太平洋側ではブナ林が成立する頂部緩斜面,山腹斜面に生育していたが,日本海側ではブナ林が成立しない谷,小谷の谷壁斜面に生育が限られるという,生育立地の地理的差異が確認できた.このように,生育立地に地理的差異がみられた種群には,広葉草本種が多く含まれていた.一方,太平洋側,日本海側を問わず,ブナ林が成立する頂部緩斜面,山腹斜面に生育していた種群や,日本海側においてのみブナ林が成立する微地形単位に生育がみられた種群には,木本種やシダ型草本種が多く含まれており,広葉草本種は少なかった.
  4.いずれかの地域においてブナ林に生育する広葉草本種のほとんどは,太平洋側においてのみブナ林に生育し,日本海側では分布するものの,ブナ林以外の群落に生育していると考えられた.
  5.太平洋側と日本海側のブナ林群落の大きな違いは,太平洋側では広葉草本種の出現割合が高い亜群集が存在するが,日本海側の2地域ではそのようなタイプが存在しないことであった.このようなブナ林群落の地理的分化を引き起こしている日本海側のブナ林における広葉草本種の貧化・欠落は,種が分布しないことによって生じているのではなく,それらの種の生育立地が,ブナ林から他の立地へとシフトしていることに起因していると考えられた.

Copyright © 2004 植生学会

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