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植生学会誌
Vol. 22 (2005) No. 1 p. 1-14

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http://doi.org/10.15031/vegsci.22.1

原著論文

人工林以外の日本の照葉樹林は自然性の違いによって大きく3つのタイプに区分される.すなわち,(1)ほとんど人の手が加わっておらず,原生状態を維持している樹林(照葉原生林),(2)薪炭林のような定期的伐採や下刈りは行われなかったが,社寺林のように,不定期で部分的な人為攪乱や著しい断片化によって自然性が低下し,原生状態とはいえない樹林(照葉自然林),(3)かつて薪炭林として利用されていた萌芽林(照葉二次林)の3タイプである.本研究では,これらの森林タイプの種組成および種多様性の相違と人為攪乱および断片化の関係を明らかにすることを目的として,対馬の照葉原生林,照葉自然林,照葉二次林に100m^2の調査区を合計76区設置し,全ての維管束植物を対象とした植生調査を行った.全層の種組成の類似性に基づいてDCAによるスタンドの序列を行った結果,(1)照葉原生林,照葉自然林,照葉二次林の種組成は互いに明らかに異なっていること,(2)照葉自然林は照葉原生林と照葉二次林の中間的な種組成を有していることが明らかとなった.また,照葉原生林および照葉自然林のDCA第1軸スコアと樹林面積の間には高い有意な相関が認められた.これらのことから,森林タイプ間の種組成の相違は人為攪乱と断片化の程度を大きく反映していると考えられた.照葉原生林ではイスノキとスダジイが優占していたが,照葉自然林や照葉二次林ではイスノキはほとんど優占していなかった.この現象は,イスノキの萌芽力の低さと自然林および二次林で行われた樹木の伐採に起因していると考えられた.種多様性(species richness)の尺度として調査区あたりの出現種数を算出し,この値を森林タイプ間で比較した.全出現種と照葉樹林要素の出現種数は森林タイプによって有意に異なっており,照葉原生林,照葉自然林,照葉二次林の順に減少する傾向にあった.全出現種および照葉樹林要素の出現種数と断片化の間には明瞭な対応関係は認められなかった.しかし,照葉原生林や照葉自然林に偏在する種の出現種数は樹林面積と高い正の相関関係にあったことから,森林タイプ間の種多様性の相違には人為攪乱だけでなく断片化の影響も関係していると考えられた.

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