植生学会誌
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原著論文
東日本太平洋側におけるブナの分布とその下限を規定する要因について
原 正利
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23 巻 (2006) 1 号 p. 1-12

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抄録

  1. 八溝山地および阿武隈山地,北上山地を中心とする東日本太平洋側におけるブナの分布について,標本(196点)および文献(233件),研究者からの私信(28件)を情報源として分布情報データベースを作成した.さらに,これに基づいて72地域で現地調査を行い,あらたに206個体のブナの分布データを得た.
  2. 上記の分布情報を解析した結果,ブナはこれらの山地に点々とではあるが水平的に広く分布し,垂直的にも海抜約100m前後から1000m以上の広範囲に分布することが確認された.
  3. ブナの垂直分布下限は暖かさの指数WI=90℃・月,寒さの指数CI=-10℃・月,1月の平均気温=1℃とほぼ一致した.ブナは常緑広葉樹の分布上限(北限)に平行して,一部,分布を重複させつつ,分布下限(南限)を形成していることが明らかとなった.
  4. ただし,内陸に位置する八溝山地中部の鶏足,鷲子の両山塊とその周辺地域では,ブナの垂直分布下限が著しく下降しWI=105℃・月まで達していた,この地域は関東平野内陸における常緑広葉樹の分布北限域であり,冬期の低温や季節風が常緑広葉樹の分布を限定的なものとしていることや,植生史的にみて常緑広葉樹林の分布拡大が遅れたために,ブナの個体群が低海抜地に遺存分布していると考えられた.
  5. ブナの分布下限を規定する要因として,常緑広葉樹との競争関係が重要と考えられた.
  6. 東日本太平洋側において,ブナが種としては低海抜地まで分布するにもかかわらず,ブナ優占林の分布が比較的,高海抜地に限られる原因について推論した.
  7. ブナの垂直分布域は,緯度的に南部に位置する八溝山地・阿武隈山地では山地の山頂付近を除き大部分,下部温帯域に含まれるが,北上山地では,上部と下部を含む温帯全域に及んでいることを指摘した.

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