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植生学会誌
Vol. 23 (2006) No. 1 p. 37-54

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http://doi.org/10.15031/vegsci.23.37

原著論文

  1. 本研究は新潟県佐渡島の棚田放棄地において,さまざまな植物群落が成立している原因を,土壌,地下水,地形などの環境要因との関連から明らかにすることを目的とした.
  2. 18ヵ所に調査プロットを設定し,植生,土壌,地下水位の調査を行うとともに,土壌と水のサンプルを採取し,化学性の分析を行った.
  3. 本調査地の植物群落は,優占種の生育形や樹高,草本植物の種組成により,中生高木林,湿生高木林,中生低木林,湿生低木林,ヨシ群落の5タイプに分けられた.
  4. 調査したすべての土壌断面で,棚田として利用していたころの作土層と心土層を確認でき,作土層の上部には,腐植を多く含んだ黒色層が形成されていた.
  5. 平均地下水位は中生高木林と中生低木林で低く,逆に湿生高木林と湿生低木林,ヨシ群落で高く,両者の違いが明瞭だった.
  6. 多くの土壌断面中にグライ層が存在し,その現れる深さは平均地下水位と強い相関を示した.
  7. ヨシ群落では土壌表層に堆積した泥炭の影響で,他の群落タイプよりもC,N含有率が高かった.また,ヨシ群落と中生および湿生低木林では,中生および湿生高木林よりも土壌中のCaが多く,pHが高かった.
  8. 斜面下部に位置するヨシ群落と湿生低木林では,斜面浸出水が地下水のおもな供給源と考えられ,中生および湿生高木林よりも地下水位の経時変動が小さく,各成分の含有率とpHが高かった.
  9. 林床植生のデータを用いたDCAによる第I軸上でのプロットの配列は,平均地下水位,土壌,地下水の多くの化学性との間で有意な相関を示し,地下水位の高さに起因した土壌の水分環境傾度に沿った空間的な植生構造の変化を反映していると考えられた.
  10. 棚田放棄後の植生遷移においては,畦および棚田間の法面の存在と周囲の植生の影響が大きく,高木林では,その内部を被陰することで林床植生の組成や優占度に影響を及ぼしていた.
  11. 棚田放棄後は斜面位置や傾斜といった地形条件の違いが地下水位の高さやその変動パターンを通じて異なる植物群落を成立させ,さらに土壌や地下水の化学性にも影響を及ぼしていると考えられた.

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